バス運転手の新卒採用
さて、先回の記事でバス運転手の人材不足について書きましたが、現在の世の中の構造上、やはり事業者が生き残る為には継続的に優秀な人材の採用・戦力化が必要となってきます。
中途採用やヘッドハンティングなどで都度補強するという事も出来なくはないのですが、バス業界に至ってはコスト的な問題や事業構造の問題もあって、なかなか難しいのが現状です。
そこで、新卒採用です。
ある程度の規模の企業であれば、継続的に行っているいわば当たり前の採用手法ですし、バス業界ももちろん導入しています。
が、こちらも先述した通り、バス運転手に職種を絞ってみてみると、新卒運転手というのは、まだまだレアな存在で、総合職、いわゆるキャリア組としての入社が主となっています。
大手バス事業者というと、私鉄系の大企業であったり、地域によっては地元の巨大企業であるケースも多く、学生にとってもある程度魅力ある環境なわけです。
が、職種が運転手となると話は別。
よほどの事が無い限り、優秀な人材が運転手の新卒にエントリーしてくるというのは無いのが現状です。
皆様は小さい頃に夢ってありましたか?
男性ですと、飛行機のパイロットや宇宙飛行士、電車の運転手など、結構運転系の仕事って、夢見る人が多い印象です。
バス運転手だってそう。
小さい頃に「バスの運転手になる!」という人も少なからずいたはずです。
が、いつを境にかは定かではありませんが、描いた夢の実現に向かって舵を切る人はいなくなるんですよね。
というか、選択肢にも入らない。
これ、地球の七不思議のひとつだと個人的には思っています。。。(笑)
やはり、ある程度魅了的に映らないと進路を考える上で、目標にはならないですよね。
つまりその魅力を作り出さない限り、新卒運転手がレアキャラ状態という現状からは抜け出せないわけです。
では、方法は無いのでしょうか。
飛行機などはなかなか若い頃に乗る機会も少なく、ある意味、非日常の中で見かけるパイロットを「かっこいい!」と思うのだと思います。
いわゆる”ステータス”です。
今は航空業界もコロナで厳しいですが、やはりある程度の高給が保証されるという魅力も相まって、根強い人気がありますよね。
バスというあまりにも身近で日常な乗り物が、同じアプローチで改善できるとは思わないのですが、ヒントは得られるような気がするのです。
バス運転手のブランディングを考えてみましょう。
早速イメージ戦略に着手したいところですが、先に事業者内で見直すべきところがあると思います。
先述した通り、バス事業者内でもエリートコースから外れている状態では、スタートラインにも立つことが出来ません。
バス運転手の地位をまずは社内から高めて行く事。
これって、非常に重要だと思うのです。
わかりやすい所でいうと賃金体系です。
現在のバス運転手の待遇は、35歳を超えると賃金が上がらないような体系の事業者が非常に多いです。
つまり長期キャリアを形成できないという事。
一般企業でいうと、主任から課長補佐レベルでストップしてしまう状態という事なんです。
もちろん、運転手からエリートコースに進む方もいらっしゃいます。が、あくまでもそれは運転手から総合職へ移っての事。
運転席にいる限り、出世が出来ない状態では、運転手を目指す人なんて増えるわけがないですよね。
新卒運転手や若手人材を本気で取りに行く為には、現体系の見直しは必須になります。
(これをせずに採用強化したところでコストの無駄使いです)
ただ、賃金を上げるだけで売り上げが変わらないのであれば、運営コストが上がるだけの事です。
運転手の地位向上=サービスの向上=売上アップ にならなければ、それこそ意味のない取り組みになってしまいます。
売上アップは現状、そう簡単に成し遂げられる事ではありません。
が、サービスの向上は、管理体制・教育体制の見直しである程度改善させることが出来ます。
サービスの向上=顧客満足度アップ です。
顧客満足度が上がるとどうなるか。
当たり前ですが、リピート数アップ、新規客アップに繋がります。
これはどれだけ厳しい状況下でも絶対です。
わかりやすい乗り物、便利な乗り物、安心・安全な乗り物、使って気持ちの良い乗り物、また乗りたくなる乗り物になっていますでしょうか?
運転手のサービス向上により、上記事項で改善できる事がたくさんあります。
また、運転手の意識向上から、改善策は生まれるモノですし、その改善速度も速くなります。
極端な話ですが、降車の際、ぶっきらぼうに「あざしたー」という運転手と「ご乗車ありがとうございました。どうぞ、道中お気をつけて。」と心を込めて挨拶ができる運転手。どちらが印象が良いかは言うまでもありません。
中には管理・指導せずとも実践できている運転手はいます。が、同水準の対応をいったいどれだけの運転手が出来ているでしょうか。
一部の運転手だけが行っているうちは、地位向上に繋がりません。
それを標準サービスとして提供できているのが航空業界というわけです。
それを実現するためには、もちろん厳しい訓練や管理が継続的に行われているわけですが。
ただ、運転手=安全運転とサービスのプロ というイメージが定着すればどうでしょう。
そのプロを目指す若者が生まれてくるのは、不思議な事ではありませんよね。
難しいし、時間がかかるのは百も承知です。
が、諦めたらそこで試合終了なわけです。(誰かが言っていた名言ですね)
SNSや動画など、様々なチャネルが今はあります。
そこに手を出すだけで、若年層に対して取り組んでいる感は出ます。
が、それをする前にやるべき事があるはずです。
まずは、ブランディングの前に事業者内で運転手というものをよく分析し、考える事から始める事をおすすめます。
具体的にブランディング戦略を進めて行くのは、そのあとで。
効き目が違うわけです。
長くなってしまいましたので、具体的なブランディングについては、また別の記事で。